欧州で再び難民流入の危機

04.03.2020

 

 欧州で再び難民と移民の欧州への流入危機が起きている。トルコのエルドアン大統領は、EUに対する「報復」として同国内に留まっている難民や移民の欧州への越境を2月27日に容認した。難民に「欧州への門」を開いた結果、トルコにいる370万人のシリア難民に加え、中東やアフリカからの7万6000人以上の難民と移民が欧州への越境を始めた。

 欧州には、トルコからギリシャやブルガリアを経て陸地を北上する経路と、地中海を渡りイタリアを経由して北上する2つのルートがある。ギリシャは即座にトルコからの難民流入を阻止するために、国境に機動隊を配置、海軍による海上警備の強化に動いた。29日には約1万5500人の難民がギリシャ国境付近に集結し、越境を目指す際に警察隊と衝突した。1日にはトルコの内相が、7万6000人以上が欧州に越境したと発表している。

 

 2015年にシリアからの難民を中心に約100万人以上が欧州に流入し、「難民危機」を引き起こした。多くの欧州諸国は難民を受け入れたが、社会困難が起き、反難民感情が高まった結果、反移民政策を掲げる政治政党への交代が起きた。このことを受け、欧州連合(EU)は2016年にトルコと移民協定を結び、トルコは中東やアフリカからの大量の難民や移民の越境バリアになることと引き換えに、EU側から難民支援金として6億ユーロが提供された。

シリアのイドリブからの難民流出
 反体制派の最後の拠点となっているイドリブで、シリアとロシア軍の合同作戦が展開され、アサド政権、ロシア、トルコの間で緊張が続いている。イドリブでの戦闘激化で更なる120万人の難民がトルコに避難しているため、難民問題は深刻化している。トルコにとってこれ以上の難民を受け入れる能力はなく、国内での反難民感情が高まっているなか、更なる難民流入への高い危機感でとった策でもある。

 これまでトルコ政府は、難民支援金の増額やシリアでのトルコの軍事関与へのNATO支援を得る狙いで、欧州との国境解放を外交カードとして使ってきた。今回は、シリアの西部のイドリブで反政府勢力を支援するトルコ部隊の兵士33人が、アサド政権とロシア軍による空爆で死亡したことが発端である。トルコはNATOの一員としてNATOの支援を要請したが、支援が得られなかったことが難民の欧州への流入を容認する引き金となった。

 現在、新型コロナウイルの感染が拡大しているなかで、欧州への難民流入は経路不明な深刻な感染拡大につながる可能性が高く、早急に対策が求められる。

 

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