小氷期による冷却が続く太平洋深海

Photo: jpl.nasa.gov

 

ウッズホール海洋研究所とハーバード大学の研究チームは、小氷期(Maunder Minimum)による深海の寒冷化を見出した。(Gebbie et al., Science 363, 70, 2019)。地球の気候は、中世の暖かい時期から約700年前の小氷期への移行で寒冷化した。19世紀末のHMSチャレンジャーの観測地と20世紀末の観測データを海洋循環モデルと組み合わせると、表層海洋と大西洋深部の水温は温暖化を反映しているものの、太平洋深海は小氷期の影響で冷却されており、1750年以来の地球全体の熱収支は25%下方修正されることがわかった。

 

これまでの研究では、太平洋の海水が最低水深まで循環するのに非常に長い時間がかかるとされていた。地表の水が底に達するまでに、おそらく数百年もの長い時間がかかると理解されていた(研究チームが2012年に考えていた時間スケール)。そのため太平洋の底の水温は何100年も前の表面温度を反映している。

 

このことを確かめるために、研究チームは2キロメートルの深さまで海洋測定をしたアルゴプログラムと呼ばれる国際研究グループからデータとともに、比較のためにHMS チャレンジャーの乗組員によって集められた1872年から1876年の期間の2キロメートルの深さまで太平洋の水温データを解析して、過去1世紀半にわたる太平洋の水の循環をシミュレートする計算機モデルを完成した。 

 

Credit: Science

 

このモデルは、1.8から2.6キロメートルの深さの太平洋の海水温が20世紀の間に寒冷化したことを示している。定量性はまだ改良の余地があるものの、温度変化0.02と0.08℃の間である可能性が最も高いとしている。寒冷化の原因は1300年からおよそ1870年まで続いた小氷期(Little Ice Age)によるものである。中世の温暖期間(Medieval Warm Period)に続くミニ氷河期の影響で海水温度が下がり続けている。