SARS-CoV-2の起源をめぐり Part 1

2021/5/31

 SARS-CoV-2 の最初の感染者は11月末に中国武漢市で感染したとされる。2020年1月2日までには41人が入院、そのうち13人はウイルスの発生場所とされていた武漢市の海鮮市場とは別の場所で感染した可能性が浮上した。しかし、SARS-CoV-2が海鮮市場で野生生物から人へ自然に飛び移ったことがSARS-CoV-2起源の主流となり、コロナウイルスの研究を行っていた武漢ウイルス研究所から流出したとする説は陰謀説として否定されてきた。

 

ミリタリー・ワールド競技大会

 2019年10月18~27日に武漢市で第7回ミリタリー・ワールド競技大会が行なわれた。100カ国から約1万人の軍人選手と関係者が参加、大会中にSARS-CoV-2に感染、発症また重症化した選手が報告されている。ミリタリー・ワールド競技大会の終了後、参加した選手や関係者たちが帰国したことで、世界中にSARS-CoV-2が広がったとされる1つの有力な説がある。

 感染症の世界的パンデミックで思い浮かぶのが、1918年のスペイン風邪である。あまり知られていないが、スペイン風邪が米軍基地のフォート・ライリーで発生、そこから他の米軍基地に広がり、戦地であった欧州に派遣された米軍兵士が同盟国フランス兵士に感染を広げ、そこから欧州各国に拡大し、世界的パンデミックとなったのである。

 

 同じようなことがミリタリー・ワールド競技大会を通じて起きたのではないかとの疑いがある。ミリタリー・ワールド競技大会に参加したアメリカ選手団が戻った63の米軍基地や施設でSARS-CoV-2の感染が報告された。さらに、アメリカ選手団がワシントン州のシアトル・タコマ国際空港経由でチャーター便を使ったため、ワシントン州で最も早い段階で感染者拡大が起こったとされている。

 アメリカ選手団だけでなく、カナダ、ドイツ、イタリア、フランス、イラン、ルクセンブルク、スウェーデンなど多くの参加国選手団の間で感染が広がったことが確認されている。ミリタリー・ワールド競技大会はSARS-CoV-2の発生地、グラウンド・ゼロとする確証は高く、参加各国の選手団の帰国によって世界各国に広がった可能性が高い。

 

 SARS-CoV-2の最初の感染者、ペイシェント・ゼロが誰であるかが未だに確認されていないなか、ミリタリー・ワールド競技大会中に武漢ウイルス研究所からSARS-CoV-2ウイルスが流出したのではないだろうか。中国政府はアメリカ軍が中国にウイルスを持ち込んだと当初から反論しているが、SARS-CoV-2による犠牲が最も高いのは欧米であり、社会的、経済的ダメージは続いている。