加速する地磁気の磁極シフト

06.02.2019

Photo: NOAA

 

厳密な真北は移動している。過去の地球の歴史には磁極が入れ替わる磁極逆転現象も起きている。磁極は常に移動しており、ふらふら移動したのちに戻ってくる”Polar Wandering”現象が起きている。しかし地球の北磁極はここ数十年で非常に速く移動したため、磁石の方位に誤差が生じている。そのためNOAAの磁極点の更新が予定よりおよそ1年早く行われた(Witze, Nature 565, 143, 2019

 

磁北極は、年間約55キロメートルをふらふらと移動している。それは2017年に日付変更線を横切り、そしてカナダからシベリアへ移動すると考えられている。GPSは衛星ベースであるため影響を受けないが、スマートフォンのコンパスだけでなく、飛行機や船も補助ナビゲーションとして磁北に頼っている。

 

空港の滑走路の名前は磁北に向かう方向に基づいており、磁極が大きく移動すると名称が変更される。例えばアラスカ州フェアバンクスの空港は、2009年に滑走路を1L-19Rから2L-20Rに変更した。

 

カナダ北極圏で最初に測定された1831年以来、磁極はシベリアに向かって約2,300キロメートル移動した。そのスピードは2000年以来、年間約間15 kmから年間55 kmに増大した。

 

 

Credit: Nature

Source: World Data Center for Geomagnetism/Kyoto Univ.

 

磁極シフトの原因は地球コアの外側(液体)の不安定な動きである。地球の中心部には鉄とニッケルの高熱液体があり、その動きによって磁場が発生する。興味深いのは南磁極は北よりはるかに遅く動いていることである。一般に地球の磁場は弱くなってきているが、これは最終的には反転する前駆状態の可能性がある。磁極逆転は地球の過去に何度も起こったことがあるが、過去78万年の間は起こっていない。磁極が逆転するときには1000年以上かかるもで今日明日の脅威にはならない。

 

しかし加速する北磁極の移動はナビゲーション精度に影響を与え、磁場が弱くなれば、地球を危険な放射線から守っているバンアレン帯に影響し、衛星の電子回路を損傷しや宇宙飛行士の被曝のリスクが増大する。なぜ磁場がそれほど劇的に変化しているのかについては、決定的な理解には程遠い段階である。2016年に観測された地磁気パルスは、コアの深部から発生する流体磁気波によると考えられ、北磁極の加速している磁極の移動は、カナダ直下での溶けた鉄の高速ジェットに起因すると推測されている。こうして考えるとコアの活発化は否定できない。コンパスを頼るナビゲーションには誤差が無視できなくなることに注意しなくてはならない。