世界一のダムと環境破壊

Aug. 7, 2015

Photo: News.com.au


中国の三峡ダムは長江中流域に1993年から建設し2009年に完成した三峡ダム水力発電所は2,250kWの発電能力を誇る世界最大の水力発電所である。重慶市にいたる長江上流に位置し、下流側への水流を制御することがダムでつくられる貯水池の目的でもあった。


中国の電力エネルギーミックスは火力が圧倒的に多く、温室効果ガスを排出しない水力発電所はクリーンなエネルギー源として、政府も力をいれていた。一方ダム建設で避けられない住民移動は110万に及び、強制退去の強引なやり方は周辺住民の反感を買った。中国政府の方針として都市部の高層アパートへの農民移動という背景もあったが、最近になって共産党幹部の汚職が明るみになり、電気料金に上乗せされた膨大な建設費への批判が続出している。


ここでは三峡ダムの設備と発電所の能力について概観する。三峡ダム水力発電所(以後、三峡ダム)は70kWの発電機が32台設置されている。全32台の合計出力は2,250kWで、商用原発の発電能力を大きく超える。


ダムの規模は長さ貯水池の570kmにわたって水位175mの貯水量は393億 というとてつもない貯水能力となる。ちなみに黒部ダムの水位は186mだが発電量は33.5万kWなので、黒部ダム67個分。規模の違いがはっきりする。世界的に見ると同じクラスの巨大ダムは南アメリカ、ブラジルとパラグアイの国境付近にあるイタイプダムだが、年間発電量トップの座は三峡ダムが揺るぎのない地位を築いている。



Photo: Rare Delights

 

歴史的には1919年に孫文が三峡ダムを提唱して以来の悲願であった。しかし巨大な貯水によって、水質が汚染され生態系への影響や、地盤が弱い下流に設置されたため地滑りや最近指摘されている地震を誘発する恐れなど、マイナス面の事象が浮かび上がった。また幹部汚職の問題は建設がらみの一般的な問題であるが、大規模な計画だけに注目されている。

 

世界一のダムが環境を破壊し汚職の温床となったことは行き過ぎた成長の代償である。発電された電力は上海に送られ高層ビルラッシュが続く不動産バブルを支えることに貢献しているのはなんとも皮肉な話だ。