米国税庁の標的となったビットコイン・ユーザー

25.11.2016

Photo: thenextweb

 

 コインベース(Coinbase)は米政府認可の米最大のビットコイン取引所である。そのコインベースに対して、司法省は国税庁の代理として、米国におけるコインベースの顧客情報の公表を巡り裁判所命令の申請を11月17日にカリフォニア州の北部地区裁判所に提出した。対象となるのが2013年12月31日から2015年12月31日の期間に、仮想通貨を使って取引を行った顧客情報である。

 

 コインベースはサンフランシスコに本社を置く、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨の取引を展開している取引所である。2015年12月時点では、ビットコインのウォレット、ビットコイン-米ドルの換金、決済代行サービスなどでは米国最大で、世界4位のビットコイン取引所であった。日本を含めて、世界32ヵ国間で取引を行っている。コインベースの480万人のユーザーは、約50億ドルの仮想通貨を使っての取引を行ってきたとされ、世界で最も人気の高いビットコイン取引所といわれている。

 

 司法省の申請書によると、2016年1月の時点で、世界中で10万以上の小売業者(マイクロソフト、アップル、アマゾン、エクスペディアなど)がビットコインによる支払い決済を行っている。2015年の一年間で、101億ドル相当のビットコイン取引が行われたと推測される。2016年末には、ビットコインを取り扱う業者は15万に拡大すると見込んでいる。

 

 

 司法省は、ビットコイン取引101億ドルに対する課税収入が国税庁に入ってきてないことを理由に、コインベースの顧客情報の提供を求めていることを訴えた。対象となるのが、米国に住所、米国に電話番号、米国のe-mail ドメーン、又は米国の銀行口座を持つ顧客である。

 

 要求されている顧客情報には、ユーザー・プロフィール、ユーザーの好み、ユーザーのセキュリティー環境、ユーザーの支払い決済方法、アカウント/ウォレット/保管ヴォルトへの資金源などである。さらに、顧客のアカウント/ウォレット/保管ヴォルトに関しては、取引別に日付、金額、取引の種類、取引相手の名前と詳細な情報、ビットコイン取引に関しての受け取りや送金についての要求や手続きの説明などを含む全てのやり取りの情報の提供を求めている。

 

 

 国税庁の顧客情報の公開要求は、仮想通貨が脱税の目的で使われたと捜査で疑われている3件のうち2件がコインベースの顧客であったことがきっかけとなっている。国税庁は、2014年に法定通貨と換金できる仮想通貨は、資産とみなし、課税の対象としている。

 

 コインベースは、司法当局とは協力する姿勢を示しているが、要求されている顧客情報の内容がプライバシーの侵害として、法廷で反対することを表明している。