風レンズ風力発電~エネルギー危機を救う日本の技術

01.10.2016

Photo: learn.eartheasy

 

毎年10%以上の成長を遂げている風力発電は有望な自然エネルギー利用技術だが、発電システムの機械的要素が台風などの強風で損傷するリスクが高い。台風やハリケーンの持つエネルギーは強大であるので、耐風能力の高い風力発電ができれば、暴風であっても風力発電には有利となる。

 

太陽光発電の普及はCIGSパネルで活況であった米国大手のSolindra社が倒産するなど、北米の太陽光発電の普及は失敗の色が濃い。太陽光パネルが高価で設置の初期投資が重荷になる太陽光発電が家庭に普及させることは難しいが、個人負担が少ない風力発電は、本格的な再生可能エネルギーへの転換の鍵を握るとも言われている。そのためには大規模な風力発電所の建設が必要になるが、国内設置には環境問題による制限が生じる。

 

 

画期的な技術:風レンズ

風力発電の効率の決め手であるタービン形状は技術開発が進められ、ここ数10年でエネルギー変換効率は向上し、太陽光発電と並んで代表的な再生可能エネルギーとなった。これまでの漸進的なタービンの改良に対して、最近九州大学の研究グループによって提案された「風レンズ」は画期的といえる。風レンズはタービンブレードを取り囲む円形の筒で、内径は下流側で絞り込まれている。

 

 

Source: Energies 20125(12), 5229-5242

 

タービンが回転するときに押し出される空気の流れが気圧の低い部分を作り出すことによって、流速が高められ発電効率を2-3倍高める。研究グループによれば大規模な風力発電所の設置は陸から20-40km沖合の洋上が適しているという。

 

すでに福島沖にはメガフロートに設置された風力発電所(福島洋上風力コンソーシアム)が合計出力14MWの洋上風力発電の実証実験に入っている。さらにメガフロートを地震や津波に耐える6角形の構造として連結し、その上に設置される洋上風レンズ風力発電所によって再生可能エネルギーへの転換の加速が期待される。

 

 

Credit: Kyushu University

 

 

原子力発電のコストが火力に比べて安いのは稼働しか考えていないからである。使用済み核燃料廃棄(バックエンド)や廃炉を含めば、差は縮まり10万年にわたる高レベル廃棄物の地中保管と事故リスクを考慮すれば、むしろ高くつく。再生可能エネルギーへの転換が成功すれば、発電コストは維持のみである。電力需要が倍増する2050年までに、風レンズ洋上発電所を建設していくことは原子力発電の技術的問題に比べれば取るに足らない、即実行可能な技術なのである。