アーミッシュが癌にならない理由

09.11.2016

Image: etow.edu

 

アーミッシュとは米国、カナダに現代社会を拒絶する独自のコロニーをつくり自給自足の生活をする集団である。人々は彼らを嘲笑しのけ者扱いすることが多いが、彼らには厳格な生活を送る代償として現代人が羨む贈り物があった。アーミッシュたちは他の米国人よりもはるかに健康なのである。

 

アーミッシュたちの癌や自閉症の発症率が極めて低い。時代とともに増大する癌発生率や自閉症は近代社会で増加したのだから、古き良き時代をそのまま続けている彼らが健康であることは矛盾しない。オハイオ州立大学の研究グループは週内のアーミッシュたちを調査して、癌発生率が州平均の60%に満たないことをみいだしている(J. Westman et al. Cancer Causes Control 2010 21, 69)。彼らの生活パターンからその原因なのかを探ると現代社会の問題点が明らかになる。

 

 

アーミッシュが癌にならない理由

アーミッシュは喫煙しない。男性、女性とも喫煙しない。タバコの喫煙者と非喫煙者の間で肺癌発生率が異なるが、それを裏付ける肺癌の原因になるかもしれない遺伝子の変異率が有意に異なることも最近の研究でわかってきた。世界約5000人のがん患者の遺伝子データを解析し、たばこを多く、長く吸う人ほど遺伝子に突然変異が起きることが、サイエンスに発表された。正常細胞が癌化する原因とされる遺伝子の突然変異が、たばこの化学物質によって誘発されることが科学的に証明されたのである。この点でアーミッシュが肺癌の発生確率が低いことは容易に説明がつく。

 

アーミッシュはワクチンを受けない。最近ワクチン接種と自閉症の関係がとりざたされているが、アーミッシュ約20万人中自閉症にかかった人はわずか3名である。ワクチン接種に関する政府の圧力に彼らは屈せず接種を拒否し続けてきた。ワクチンを全く受けないにもかかわらずアーミッシュは折り紙付きの健康優良児なのである。

 

アーミッシュは自分たちが栽培したオーガニックしか食べない。添加物の入った加工食品を嫌い、自分たちの農園で育てたオーガニックしか食糧にしない彼らはGMO食品とは無縁である(注1)。またファーストフードのようなGMOまみれのファットフードも食べない。季節の食材を自分たちの農園で収穫し調理して食べる。牧畜も自分たちの牧場で行い、外部の乳製品と縁のない生活を送っている。自然食品には酸化を防ぐ物質が含まれ、活性酸素などフリーラジカルから体を守ることはよく知られている。

 

(注1)アーミッシュが農薬を使わないわけではない。アーミッシュはGMOを禁止していない。また自分たちの農場でGMO作物を栽培していることは事実なのでので、オーガニック一辺倒という表現は正しくない。

 

アーミッシュは体脂肪率が低いが脂肪を食べないわけではない。健康に良い脂肪をむしろ多く摂取して、脂肪に含まれる有効なビタミンAEK2などを上手に体に取り入れているのである。脂肪を無理に断つダイエットではこれらの重要なビタミンを摂取できなくなる。

 

アーミッシュたちは農業・牧畜をするので外で労働する時間が長い。米国人の平均体脂肪率31%に比べて彼らの平均は3%でしかない。活動して脂肪を燃焼しているからである。またアーミッシュたちには現代生活のストレスがほとんどない。

 

 

これらの統計からは現代社会が抱える病気の原因を彼らが持っていないこと、健康な理由、が明らかになる。健康になろうとするには彼らの生活慣習をお手本に、できることから始めて生活パターンを変えていくことが早道なのかもしれない。