モスル奪還で書き換えられるIS支配圏~鍵を握るクルド人

17.10.2016

Photo:  huffingtonpost

 

イラクのモスルはスンニ派が支配的な国内第2の都市であった。2年前にISが占拠して以来、最大拠点となってきたが、1017日、米軍の支援のもとにイラク政府が奪還に本腰をいれることとなった。2016年の2月の奪還作戦が成功しなかったが、今回のモスル奪還が成功すればIS勢力地図が書き換えられることになる。

 

米国国防総省の発表では今回の作戦では有志連合軍がモスルへの補給路を断ち包囲網でIS勢力を孤立させることが狙いである。多国籍軍の一部はIS勢力を追い詰めすでにモスル市内に入っており、今回の作戦で完全奪還を目指す。

 

 

モスルはシリアのラッカと並ぶIS勢力の2大拠点で、軍事活動の司令部である

。米国は拠点を落とすことで欧米のテロ活動を根絶できるとしているが、オバマ政権は地上軍を送ることをためらい、特定のリーダー殺害を目的として軍事アドバイザーを特殊任務として送り込んだ。

 

彼らは数ヶ月に及びイラク政府、クルド人部隊、地元の軍事勢力を使って今回の奪還作戦を練ってきた。しかしこの間接的な戦略がIS勢力増大を招いたとして外交筋、軍事筋、共和党幹部、次期大統領候補の批判を浴びている。

 

 

Source: midgets eye

 

実際、モスルの奪還が成功するには最近のイラク、ラマデイ奪還より多くの米軍投入が必要とされる。しかしオバマ政権の意向で国防総省は米軍の投入を見送り物資補給に力をいれている。補給を断つ作戦はラッカ奪回に続くものであるが、モスル奪還に米軍増強が必要である事実は隠せない。

 

そのため作戦が特定標的(IS幹部)の殺害に終われば、完全奪回には至らない。残存IS勢力の再結集で再度落ちの恐れがなくなったわけではない。イラク政府の説明ではモスル市内に突入するのはイラク政府軍と国家警察に限られるというが、かつてISにモスルを奪取された際にイラク政府がシーア派の部隊を投入した失敗が生かされているのか疑問である。

 

米軍の地上部隊投入のない戦略が功を奏するかは多国籍軍の連携にかかっている。その中でもモスクにゆかりの深いクルド人勢力の動向がカギを握っている。クルド人勢力のリーダーであるマサード・バザニ氏がイラク政府に協力して奪還作戦の準備を整えたことを認めている。一方で攻撃開始で100万人の市民がリスクを負うとして国連は人道的見地から、攻撃による市民の被害を警告した。オバマ政権にとっては地上軍投入なき戦争介入が試される最後の戦いとなる。