ドイツ銀行の破綻プロセスは止められるか Part2

19.10.2016

Photo: newstateman

 

 ドイツのWelt am Sonntag紙によると、米司法省から140億ドルの制裁金の支払いを命じられているドイツ銀行は、制裁金の引き下げの条件として、米司法省は「ビジネス・モデルの革新的な変革」を求めていると複数の関係者の話を報道している。ここでの「変革」とは、米国市場における事業活動の見直しのことである。ドイツ銀行にとって、米国市場からの撤退または業務縮小のことを意味する。

 

 

重要性の高い米国市場

 ドイツ市場に続き、収益が高いのが米国市場で、純利益の約25%を占める重要な市場である。投資銀行部門では第7位で、欧州銀行の間では、最も高いマーケット・シェアを占めている。したがって、ドイツ銀行が米国業務縮小に踏み切れば、米銀行にとって利益拡大の大きなビジネス・チャンスとなる。

 

 米国の業務縮小で利益の減少だけでなく、ドイツ銀行にとってグローバル・ユニバーサルバンクとしてのステータスを失うことになる。今より規模の小さいドイツ主体の欧州銀行となっていくのは避けられない。しかし、欧州での経済状況が悪化しているなか、収入源のある地域からの業務縮小はバランスシート上のリスクと必要資本を減らすとはいえ、将来の収益性にさらなる低下圧力となる。

 

 

カタール王族増資の行方

 カタール王族は現在ドイツ銀行株の約10%を保有している。出資比率を最大25%までに引き上げることを検討中だが、ニューヨーク・タイムズ紙によると、ドイツ銀行の長期戦略に懸念を示していることを明らかにしている。

 

 特にドイツ銀行の収益の悪化、投資銀行部門やアセット・マネジメントなどの収益が高い事業部門における優秀な人材を失うことによる組織の弱体化、経営陣の経験不足、米司法省が課した140億ドルの制裁金などの訴訟費用の支払い能力などが、明確に示されていないことがカタール王族の融資決断の障害となっている。

 

 

 

 ドイツ銀行が今検討している米国業務縮小案は、カタール王族の増資の決断にも大きく影響を与えることなる。米国業務縮小を実施しなければ、米司法省との140ドルの制裁金の引き下げは可能とならない。米国業務縮小に踏み切れば、カタール王族の増資が白紙となる可能性が高くなる。ドイツ銀行はいずれにしても難しい決断を下すことになる。