EU離脱に議会承認が必要とした英国高等法院の判断

06.11.2016

hoto: sputniknews

 

EU離脱を決める第50号条に首相の発動権があるとしたブレクジット賛成派の理解に反して、英国高等法院は議会の承認が必要との判断を下した。テレサ・メイ首相のEU離脱戦略の要となる第50号条発動に反対していた残留派が勝利したことにより、英国のEU離脱問題は白紙に戻りかねない混乱に陥った。

 

国務長官のデビッド・デイビス氏はこの判断により最高裁判所への上訴が認められなければ、議会の法的権限の発動が必要となると述べた。メイ政府は最高裁判所へ上訴することになった。ブレクジットの可決にはメイ政権が次選挙で大勝し下院で多数派とならなくてはならない。

 

 

高等法院の首席裁判官は議会の決議なしの政府の判断による第50条の発動は民主主義に反するもので、国民を代表する議会の決議が必要であるとの判断を下した。

 

50条とはEUの基本条約(リスボン条約)の第50条のことで、離脱を決めた加盟国はEU理事会に離脱の意思を通知することを規定しそれに基づいて、EUは離脱する国と将来の関係の枠組みを交渉し合意したときに、その国のEU離脱協定の発行となる。

 

 

50条の発動権の主体がどこにあるかについては下に示すように離脱賛成派と残留派で大きく異なる。このため国民投票以前からこの問題が最終的に離脱の足かせになることは予想されていた。これによって離脱の時期は不透明となり議会の混乱は避けられない。

 

議会の勢力図は下に示すように残留派が圧倒的で議会工作でなんとかなる話ではない。この状況を打破するにはメイ政権が次選挙で圧勝し、EU離脱賛成を超党派で勝ち取る以外にないが、それは茨の道である。国民の意思は決定的であるので、議会が民意を反映していないということになる。これは議会制民主主義そのものへの不信感がつのる。

 

独裁者はそうした民衆の政治(制度)への不信感の隙間をついて入り込んでくる。