北米異常気象の原因はブロブ

11.07.2016

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2013年から北米東海岸は極寒に襲われる一方で、西海岸の干ばつは4年間にわたって続いている。今年に入って中西部でもニューメキシコ州が季節外れの雪に見舞われたり、温和な気候で知られるテネシー州が洪水被害が起きた。これまで北米の異常気象の多くがエルニーニョ現象によって説明されてきた。しかし豪雨はエルニーニョ現象で説明できても、異常乾燥は説明できない。今年のエルニーニョ現象は過去最大となった1997年に迫る勢いだが、カリフォルニアは常に干ばつ状態にある。

 

通常は太平洋の赤道直下の風(注1)は東から西方向に吹いているため、暖かい海水が同じ方向に運ばれる。何世紀も前から南米の漁師たちは、クリスマスの時期になると、スペイン語でキリストをさす「子供」の意味の「エルニーニョ」と呼ぶ異常気象が数年おきに起こることを知っていた。エルニーニョとは暖かい海水を運ぶ風が弱まると南米沖の赤道に沿って暖かい海水が塊となって停滞する現象を指す。

 

(注1)赤道直下で上昇した気流は極地へ向かうが地球の自転のためコリオリ力を受けて東に向かう貿易風が生じる。

 

中南米から広がる細長い帯状の海域がエルニーニョ現象である。今年はエルニーニョ現象が特に活発なために、太平洋西海岸の海水温度が高い。下図マップで赤と白い領域がエルニーニョ現象の海水温度の異常な上昇部分を示している。

 

 

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これまでの地球モデルは地表温度の上昇など長期的変動を対象としている。エルニーニョなどの短期的な事象のシミュレーションができないこともあってエルニーニョ現象と地球温暖化の関係は決着がついていない。

 

エルニーニョでジェット気流が変化すると熱帯から吹き込む暴風雨がメキシコ・中南米から北米に流れ込む。温暖な海水が大量の雨を降らせれば干ばつは無くなるはずである。カリフォルニアの干ばつが長期化している一方で、エルニーニョが続いているので乾燥化はエルニーニョによるものではない。2013年ごろからエルニーニョに代わって「ブロブ(塊)」と呼ばれる暖かい海水の塊が異常気象の説明に使われるようになった。

 

 

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ブロブは太平洋の北米沿岸に発生する周囲より数度Cほど暖かい海水の塊で、2013年に発見されて以来広がり続けている。直径800km、深さ90mに達するブロブは1,600kmにまで拡大して北米海岸の海流に影響を与え、北米の異常気象をもたらす。詳しい発生のメカニズムは未解明だが、大気流の停止で高気圧が停滞すると海水温度が高い塊となって移動が妨げられることが原因とされている。

 

 

西海岸のブロブは東海岸の天候にも強い影響を与える。2013年のブロブが2014-2015年に高気圧が停滞したことで拡大し、東海岸の冬の寒波に影響した。北米西海岸ではブロブの影響がエルニーニョを上回る。北米西海岸沖のブロブが生態系や東海岸の気候にまで影響している。